運動をしない人にプロテインは必要?
最近ではプロテイン推しをよく見かけます。運動をしていない人にもプロテインがおすすめされています。
あなたも「プロテイン摂った方がいいよ」なんて言われたことあるのではないでしょうか?
しかしここで疑問に思うはずです。「プロテインは筋トレしてる人が摂るんじゃないの?運動していない人も必要なの?」と。
結論を先に言うと特定の人を除いて、運動をしていない人にプロテインは必要ありません。むしろ太る原因になります。
なぜ必要ないかといえば、普段の食事で十分な量を摂ることができる からです。日常にあるタンパク質食品には「肉類、魚(魚介類)、豆腐、卵、乳製品」などたくさんあります。
ではこれらを手に入れること、普段の食事に取り入れることは難しいでしょうか?そんなことないですよね。
ではどんな人にプロテインが必要なのか、また運動をしていない人でプロテインが必要なのはどんな人なのか解説していきます。
プロテインが必要な人とは
- トレーニングをしている人
- アスリート
まず運動している人はプロテインが必要です。特に強度が高い人ほど重要です。
プロテインを摂る理由は「筋肉を作ったり、疲労回復を促進する」といったことが挙げられます。
トレーニングの効果を高めるための補助として用いるわけです。ハードなトレーニングをしている人にとって、食事では賄いきれないので効率の良いプロテインを摂るわけです。
アスリートやボディビルダーを始め筋肉量を増やしていくようなトレーニーはほぼ摂っているでしょう。
プロテインが不要の人
- 運動をしていない
- 普通に食事をしている人
これらの人はプロテインは必要ありません。プロテインは普段の食生活では必要なタンパク質量を賄いきれないから摂取するのであって、上記の人は普段の食事で十分賄えます。
運動をしていない人でプロテインが必要な人とは
運動をしていない人でもプロテインを摂った方が良い人はいます。それは「食事量が少なく低体重の人と高齢者」 です。
食事量が少なく低体重の人
体重は肥満も問題になりますが、低体重も健康的な問題が生じます。標準的な体重は「BMI18.5〜25」になりますが、BMI18.5以下の人を低体重と言います。
低体重の人はほとんどの栄養素が不足しがちです。そして人体を構成している成分の多くが不足している状態です(例えば筋肉や脂肪、骨量など)。
低体重だと、骨粗鬆症や心疾患、脳疾患のリスクも非常に高くなるので、健康や美容の面でも適正体重に戻していくことが求められます。
低体重の人は食が細いので食事量自体も少量になります。無理に増やすと胃腸を壊してしまったりするので、固形物ではないプロテインは不足分を補いやすい食品なのです。
低体重の人は体脂肪も不足しています。なので十分なタンパク質量やエネルギー源を補うためにも、糖質を含むプロテインが良いのです。ここが一般的な体重の人と違うところです(運動をしていない通常体重の人だとプロテインはエネルギー過多になり太る)。
高齢者
歳を取ると多くの人は食事量が減っていきます。それによって筋肉量が減少するとサルコペニアに陥ってしまいます。
サルコペニアを防ぐためにも、高齢者にとってタンパク質摂取はとても重要です。しかし食事量が減ってきた高齢者にとって食事量を増やすのは難しいことです。そこで固形物ではないプロテインはタンパク質不足を補うのに効果的なのです。
※サルコペニアとは高齢に伴い筋肉量(筋力)が減少していく現象。要介護のリスクが高くなる。サルコペニアのリスクは運動不足とタンパク質摂取量不足が大きく関わっています。
サルコペニアについて
厚生労働省「サルコペニア」
日本生活習慣病予防協会「生活習慣病」
タンパク質の摂取量の目安
1日当たりのタンパク質の摂取量の目安
タンパク質 推奨量(g) | ||
男性 | 女性 | |
18〜29歳 | 65 | 50 |
30〜49歳 | 65 | 50 |
50〜64歳 | 65 | 50 |
65〜74歳 | 60 | 50 |
75歳〜 | 60 | 50 |
※推奨量:ほとんどの人が必要量を満たす量
運動していない人にプロテインがおすすめじゃない理由
上記で解説した「食事量が少なく低体重の人、高齢者」以外の人にはプロテインはおすすめしません。むしろ摂らないほうがいいです。その理由について解説します。
糖質も摂りすぎることになる
プロテインと聞くとタンパク質の粉というイメージの人が多いと思いますが、実際は糖質も多く含まれています。
運動していない人がタンパク質の補給にとプロテインを摂れば、糖質も一緒に多く摂ることになってしまいます。
なぜプロテインに糖質も含まれているかというと、運動をすると体内のグリコーゲン(糖)が使われ不足します。タンパク質だけを補給すると、タンパク質は運動で不足した糖の補充に使われてしまいます。
そうするとタンパク質を摂取したはずなのに、タンパク質の補充が十分にできていない状態になってしまいます。そのため、プロテインには糖質も含まれているのです。
※トレーニング後はタンパク質だけでなく、糖質も補給することが重要です。
タンパク質は食事で十分に摂取できる
きちんとした食事を心がければ、基本タンパク質は不足しません。なので特定(低体重の人や高齢者)の人を除いて、そもそもプロテインを摂る必要がないのです。
あくまでプロテインを摂るのは、それだけ筋肉に刺激を与えている生活をしていて、食事でのタンパク質量では賄えないからです。
無駄なコストがかかる
プロテインの価格はピンキリですが、決して安価なものではありません。運動していない人であれば、必要量は食事で摂取できます。
むしろ食事をどんなに意識しても不足しやすい栄養素は他にあります。必要のないプロテインに費用をかけるのであれば、他の不足しやすい栄養素のサプリをとった方がよほど身体のためになります。
運動していなくてもプロテインはメリットある?
運動していない人がプロテインを摂るメリットについては以下のようなことが紹介されます。これらについて実際のところどうなのか、本当のことを説明していきます。
食生活が乱れていればタンパク質が不足することは確かですが、それをプロテインで補えばいいという単純なことではありません。
食生活が乱れていれば、タンパク質だけではなくビタミンやミネラルも不足します。プロテインだけではビタミンやミネラルを十分に補うことはできません。
そうなるとプロテインやサプリなど様々な補助食品を取らなくてはいけなくなります。それなら少しでも食生活を整えた方がよほど効率的です。
基本的に食生活が乱れているというのは、ジャンクフードばかりだったり、バランスの良い食事をしておらず、栄養バランスが悪い状態です。
この栄養バランスが悪い状態というのは、簡単に言えば糖質脂質が多く、タンパク質や微量栄養素(ビタミン、ミネラル)が不足しているということです。
その状態でプロテインを摂れば、タンパク質だけでなく糖質の過剰摂取状態になってしまいます。
髪の毛や皮膚の健康にタンパク質が重要なことは確かです。髪の毛や爪は表皮が角質化したもの、皮膚は「表皮、真皮、皮下組織」となっており、いずれもタンパク質が必要です。
しかし普段の食事で十分です。皮膚や髪の毛にダメージが出るのは、食生活が乱れている時です。本当に皮膚や髪の毛のためなら、プロテインを摂るのではなく食生活を正すことです。
これは絶対にありえません。通常の食事に加えてプロテインを飲んでいるのであれば確実に太ります。
「プロテインを飲んで痩せる」というのは、例えば夕食をプロテインに置き換えるといった、代用食にする方法です。
これを続ければ確かに痩せられますが、リバンドのリスクも大きくあまりおすすめできません。
プロテインの代わりになるおすすめ食品
運動をしていない人にとってプロテイン以外にも、タンパク質を補給する食品は他にもあります。
手軽で安価、取り入れやすいことを基準に、普段の食生活に取り入れやすいものをご紹介します。
栄養価(100gあたり) | |
エネルギー | 450kcal |
タンパク質 | 36.7g |
炭水化物 | 28.5g(食物繊維18.1g) |
脂質 | 25.7g(不飽和脂肪酸20g) |
ビタミン | ビタミンB群、E、Kなど |
ミネラル | カルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄分、 亜鉛、マンガンなど |
その他 | 大豆イソフラボン |
きな粉は天然のプロテインと言えます。糖質量は多くないので(炭水化物の多くは食物繊維)運動をしていない人にもおすすめです。
タンパク質以外にも食物繊維、ビタミン、ミネラルを多く含んでいます。脂質が高いように見えますが、その多くは不飽和脂肪酸で体にとって良い脂質になります。
きな粉は豆乳やヨーグルトに混ぜても美味しくタンパク質を摂取できます。
栄養価(100g) | |
エネルギー | 45kcal |
タンパク質 | 3.6g |
炭水化物 | 3.1g |
脂質 | 2g |
ミネラル | カルシウム、マグネシウム、鉄 |
その他 | 大豆イソフラボン |
豆乳も身近なものでは高タンパク食品と言えます。先ほどのきな粉を混ぜることで、立派な高タンパク食品になります。
豆乳には大豆イソフラボンというポリフェノールを含んでいることが大きな特徴です(大豆食品であるきな粉にも含まれている)。
大豆イソフラボンは女性の性線ホルモンのエストロゲンに似た働きをすることから植物性エストロゲンとも言われています。
骨粗鬆症の予防、動脈硬化防止、更年期障害の緩和など健康にいいとされてます。また、乳がんや前立腺がん等の予防にも効果があることが、疫学的な調査で明らかになってきています。
市販で売られている豆乳は無調整と調整済がありますが、飲みやすい方を飲めばいいと思います。
無調整の方が余計なものが入っていませんが、飲みにくいのを我慢して飲むのであれば調整済みでも構いません。
栄養価(100gあたり) | |
エネルギー | 81kcal |
タンパク質 | 1.7g(必須アミノ酸を多く含む) |
炭水化物 | 18.3g |
脂質 | 0.1g |
ビタミン | ビタミンB群 |
その他 | 乳酸菌、オリゴ糖、酵素、こうじ酸、フェルラ酸 など。 |
甘酒は飲む点滴とも言われるほど栄養価の高い食品です。アミノ酸が多く含んでいることや、醗酵食品なので腸内環境には欠かせない乳酸菌やオリゴ糖も含まれています。
栄養価(100gあたり) | |
エネルギー | 360kcal |
タンパク質 | 77.1g(必須アミノ酸を多く含む) |
炭水化物 | 0.8g |
脂質 | 2.9g |
ビタミン | ビタミンB群、D、Eなど |
ミネラル | ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄分、亜鉛、リンなど |
かつおぶしは鰹肉を乾燥させて削った保存食品です。元々魚肉なのでいわゆるタンパク質食品です。特に必須アミノ酸を多く含んでいます。
普段の食事にちょい足ししやすいので、簡単にタンパク質摂取量を増やすことができます。
まとめ
プロテイン商品が数多く出ている現在、プロテインをお勧めされることも多いでしょう。ただ、そんな時自分の現在の状況に本当に必要かどうか、今一度見直してみてください。
1.栄養の基本がわかる図解事典
2.栄養成分の事典
3.栄養解剖生理学(栄養科学シリーズNEXT)
4.栄養生理学・生化学実験(栄養科学シリーズNEXT)
5.たんぱく質入門
6.健康栄養学 −健康科学としての栄養生理化学−
7.からだのための食材大全