女性にありがちなスクワットの悩み
運動をする際、スクワットは必ず頭に思い浮かぶと思います。しかし女性の場合、前ももが張ってしまったり、太くなるのが心配という人も多いのではないでしょうか?
実際に「スクワットをして前ももが太くなった、以前より足が太くなった気がする」そう言われる方もいらっしゃいます。
【まず結論から】
スクワットで前ももを太くしないためのポイントは次の4つです。
- スクワットをする前に前もものストレッチをする
- 低〜中負荷高回数
- 足幅の広いワイドスクワット
- 立ち上がる時に股関節伸展を意識する
次章からスクワットで前ももが太くなる原因と太くならないスクワットのコツを解説していきます。
スクワットで前ももばかり太くなってしまう原因
スクワットをして前ももばかり太くなってしまうのは、次の3つの原因が考えられます。
- 太もも全体の筋肉のバランスが合っていない
- 立ち上がりの時、膝関節の伸展を意識している
- 足幅が狭い
太もも全体の筋肉のバランスがよくない
意外とありがちなのが、スクワットで前ももに筋肉がついたことが問題ではなく、その他の部分とのバランスの問題です。
基本的にスクワットでメインに鍛えられるのは大腿四頭筋(太もも前側)です。前ももばかりを鍛えて、他の部位とのバランスが悪くなっていくと、前ももばかりが強調されアンバランスな見た目になってしまうのです。
太ももの筋肉
前側:主に大腿四頭筋
内側:内転筋群(大内転筋、長内転筋、短内転筋)
後面:ハムストリングス(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋)
他にも太ももに関わる筋肉はありますが、ここではアウトラインを作るのに大きく関わっている筋肉を挙げています。
これらの筋肉がバランスよく鍛えられて引き締まっていることで太ももは綺麗に見栄えします。
例えばスクワットで前ももばかり鍛えて、内側や後面たるんだままだと、トータルのバランスで見栄えは悪くなってしまうのです。
※美脚をつくるコツは、奥行きがあって下から上に行くにつれ厚みの脚なので、前ももより内ももや裏もも、お尻が重要になります。
立ち上がる時、膝関節伸展が優位になっている
当然スクワットのやり方自体が問題で、過剰に前ももばかり鍛え過ぎてしまっている可能性もあります。
特に前ももが太く張ってしまうのは、足幅が狭いスクワットと立ち上がりの時に膝の伸展を優位にしてしまうことです。
ボトムポジション(下写真)から立ち上がるとき、膝を伸ばすことを意識すると、前もも(大腿四頭筋)が強く働いてしまいます。これを繰り返すことで、前ももばかりが鍛えられ太くなってしまうのです。
前ももを太くしないためには、股関節の伸展を意識して立ち上がることが重要です。
太ももの筋肉の働きと関節の動き | |
前もも (大腿四頭筋) |
膝関節の伸展(膝を伸ばす) 股関節の屈曲(曲げる) ※股関節屈曲は大腿直筋の作用 |
内もも (内転筋群) |
股関節の内転 股関節の屈曲 股関節内旋 |
裏もも (ハムストリングス) |
股関節の伸展 膝関節の屈曲 |
膝を伸ばすことを意識して立ち上がると前ももの大腿四頭筋が主体に働きます。対して股関節を伸ばすように意識するとお尻やハムストリングスが働くようになります。
※股関節を伸ばすように意識すると、結果的にお尻や裏ももを縮めるような形になります。
足幅が狭い
スクワットをする時の足幅のパターンはおおよそ
- ナロウスタンス(狭い)
- ミディアムスタンス(腰幅程度)
- ワイドスタンス(肩幅よりやや広く)
この3種類になります。ナロウスタンスとミディアムスタンスは太ももの中でも前側と外側を鍛える作用が大きくなります。
対してワイドスクワットは内側を鍛える作用が強くなります。ですので、前ももを太くしないためには足幅は広くしたワイドスタンスで行わなければいけません。
多くの女性が標準的なやり方であるミディアムスタンスで行っているので、それが前ももを太くしてしまっている原因にもなっています。
足幅で効く場所が変わるのはなぜ?
スクワットは足幅次第で太もものどこが主体に働くか変わります
- 足幅が狭いと外側や前側
- 足幅が広いと内側や前側
太ももは大腿四頭筋と言って4つの筋肉の集まってできています。
・前面に大腿直筋、中間広筋
・外側に外側広筋
・内側に内側広筋
この4つになります。
足幅でなぜ効く部位が変わるかというと、4つの筋肉の起始の違いにあります(起始とはその筋肉のスタート地点のこと)。停止は全て脛骨粗面と言って膝のちょっと下になります。
大腿四頭筋の起始停止 | ||
起始 | 停止 | |
大腿直筋 | 下前腸骨棘、寛骨臼上縁 | 脛骨粗面 |
中間広筋 | 大腿骨前面、外側面 | |
内側広筋 | 大腿骨粗線内側唇 | |
外側広筋 | 大腿骨粗線外側唇 |
赤字で書いてあるのはやや外側の部分です。つまり、内側広筋以外はやや外側に起始を持っています。
スクワットをする時、足幅が狭いと、大腿直筋、中間広筋、外側広筋はより伸長しているところからのスタートになるので、筋トレ的にはより効かせるポジションとなっているのです。
前ももを太くしないスクワットのコツ
- スクワットの前に前もものリリース、ストレッチをする
- 低負荷高回数で行う
- 足幅を広めにする
- 股関節の伸展を意識する
スクワットの前に筋膜リリース、ストレッチをする
スクワットの前に前ももの筋膜リリースや静的ストレッチをすることで、前もも(大腿四頭筋)の筋出力が弱くなります。
そうすることでスクワットの時に前ももに効かせないようにすることができます。
■筋膜リリース
- うつ伏せになってフォームローラーなどで、太もも前を転がすようにしてほぐします。
- 30〜60秒(左右各)
■ストレッチ
- 膝を曲げて座り、後ろに手をつきます。
- 伸び感が足りない時は後方に肘をつく、もしくは寝てしまいます。
- 腰が反らないように注意してください。
- 30〜60秒(左右各)
低負荷高回数で行う
前ももを太くしないためにはバーベルなどの大きな負荷はかけずに、自体重でのスクワットを高回数行うのがおすすめです。
負荷を低く高回数行うほうが筋肉量の増加より筋持久力向上になり、筋肉量が増えて太くなるより引き締まった状態になります。
筋トレは負荷と回数によって筋肉への効果が変わります。以下の表は大まかな図ですが、一般的には負荷と回数で筋肉に対する生理作用が異なります。
レジスタンストレーニングの目的と負荷・回数 | ||
筋トレの効果 | 負荷 (1RM比) |
回数 |
筋持久力向上 | 40〜60% | 20〜30回 |
筋肥大 | 60〜85% | 6〜15回 |
筋力 | 90〜100% | 1〜6回 |
※1RMとは1回できる限界の強度。
レジスタンストレーニングの負荷と効果に関しては、日々研究が進んでいますので、絶対に上記の表どおりではありません。あくまで一般的な目安となります。
足幅を広めにして行う
足幅の広いワイドスタンスで行うと、外ももより内ももを効かせることができます(前ももは大なり小なり使います)。
内ももを鍛えることで前ももが張った太い足になるのを防ぐことができます。
股関節の伸展を意識する
スクワットで重要なのは股関節の意識です。しゃがむ時は股関節を曲げて腰を下ろしていきます。
そしてここが最も重要ですが、しゃがんだところからは股関節の伸展を意識して立ち上がるようにします。
イメージ、意識の仕方としては膝のを伸ばすのではなく、股関節の前を伸ばす(前に押し出すような感じ)意識で立ち上がるようにします。
そうすることでお尻や太もも裏(ハムストリングス)に聞かせることができます。
スクワットは膝を出さないべきか?
「膝はつま先より出さない。膝を出すと前ももに効かせ過ぎてしまう」ということが言われます。
スクワットでは膝が前に出る出ないは問題ではありません。重要なことは股関節の動きです。
股関節を曲げずに膝だけ曲げてしゃがもうとすると、自然と膝が前に出過ぎてしまいます。これは間違ったやり方です。
股関節を曲げていないスクワット(結果的に膝は前に出すぎる)
しかし膝を出してはいけないというスクワットは間違っています。股関節をしっかり曲げて、上半身がすね(脛骨)と平行になるように腰を下ろしていくだけです。
その結果膝がつま先より前に出ていたり、つま先の真上だったり、もしくはつま先よりやや手前の場合もあるかもしれません。それはその人の骨格次第になります。
膝をつま先をより出さない、という意識で行うと不自然にお尻を後ろに引くような感じになり、上半身はカウンターで前に過剰に倒れてしまうむしろ不自然なスクワットになってしまいます。
パーソナルトレーニングの時の実践例
パーソナルトレーニングでも、前ももはあまり張らせたくない、そうおっしゃる女性の方は多くいらっしゃいます。
パーソナルトレーニングの時も、今回ご紹介したことと同じように、まず前ももをしっかりリリースして、筋出力を低下させるようにします。
そして反対に内ももや裏側(ハムストリングス)の筋出力を高めておき、その状態でスクワットを行うようにしています。
- 前ももの筋膜リリース、ストレッチをする
- 内もも、ハムストリングスの筋出力を高める
スクワットの前にこの2つを行います。
■前もものストレッチ、リリース
ストレッチや筋膜リリースで前ももの筋出力を弱めることで、スクワットの時前ももを働かせにくくさせます。
■スクワット
前腿が太く張るのが嫌という女性には、内ももやお尻、ハムストリングスに効かせるスクワットのやり方を指導しています。
綺麗な太ももを作るためには
- 内もも、太もも後面(ハムストリングス)を鍛えて引き締める
綺麗な太ももを作るポイントは奥行きのある立体的なラインにすることです。そのためには太もも後面と内ももを鍛えることです。
つまり太もも前より、内ももや裏ももの筋肉量を重視し鍛えていくことです。
まとめ
スクワットで前ももが張る、太くなってしまうという方は
- 先にストレッチ、筋膜リリースをする
- 足幅を広く行う
- 立ち上がる時、股関節の前の伸ばすような意識で行う
この3つを心がけてください。
前ももが太くなるからスクワットはやらない、という人もいますが、それはおすすめしません。
キレイで健康的な体を保つためにはスクワットは絶対に必要です。生涯やっていくべきエクササイズの一つと言っても過言ではありません。
前ももが太くならないやり方を身につけて、キレイな美脚作りを実践していきましょう。
【参考文献】
- 運動処方の指針 運動負荷試験と運動プログラム
- 自重筋力トレーニングアナトミィ
- 筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典
- 基礎運動学 第6版
- 運動学とバイオメカニクスの基礎