手足の冷えは末端型冷え性
冷え性は女性に多く見られる不調の一つです。特に多い手足の冷えは「末端型冷え性」 と言い、様々な不調を引き起こします。
末端型冷え性とは身体全体は体温が低いわけではないが、四肢の先まで血液が行き届かず、手足などの末端が部分的に冷えている状態のことです。
末端型冷え性の症状
- 手足が冷たい
- 手足にしもやけやあかぎれができる
末端型冷え性の典型的な症状は手足の冷えです。さらに悪化していくとあかぎれやしもやけができるようになります。
また間接的に以下のような身体トラブルにもつながります。
- 生理不順
- 肩こりや腰痛
- 太りやすい
- 不眠
手足の冷えの主な原因
- 筋肉量(筋力)不足
- 運動不足
- 食生活の乱れ
- 水分不足
- 自律神経の乱れ
冷え性の人に多いのは慢性的な運動不足です。
・筋力や柔軟性が低下して血流が悪くなる
・エネルギー代謝が下がり熱生産が低くなる
体を動かす量が少ないせいで、このようなことが起こり冷え性になりやすくなってしまうのです。
冷え性の大きな原因が筋肉量不足です。筋肉は血液の流れを作る重要な役割があります。筋肉量が少ないと筋ポンプ作用が悪くなり、手足まで十分に血液が届かなくなってしまいます。また筋肉量が少なければ基礎代謝によって生まれる熱も少なくなります。
油濃いものやジャンクフード、甘いものばかりを食べていると、血液を汚しやすく血流を悪くする原因になります。
またファーストフードやコンビニばかりの食生活ではミネラル・ビタミンといった体の機能を正常に保つために働く微量栄養素が不足しがちになります。
水分不足は血液がどろどろになり血流が悪くなる原因です。十分な水分補給こそ、血液をサラサラにして血流を良くする基本です。
水分摂取の目安は体重×30〜50mlです。そのうち1リットル近くは食事から摂取するので、残りの分をしっかり摂るようにしましょう。
特に心がけたいのは就寝前と起床時です。就寝前に1杯、起床時にも1杯水を飲む習慣をつけましょう。
ストレスなどから起こる自律神経の乱れは血液循環を悪くする大きな原因です。自律神経は体温調節のために血管を収縮させたり拡張させたりして、血液循環をコントロールしているのです。
ストレス以外にも起床や就寝時間が毎日バラバラだったり、夏場に冷房が効いている部屋にばかりいることも自律神経を乱す原因になります。
手足の冷え改善エクササイズ
冷えの改善には血液循環を良くすることが必要です。血液は心臓から主要動脈本幹を通って全身を巡り、静脈によって再度心臓に戻ってきます。
この動脈を通っているところを覆っている筋肉を鍛えていくことです。特に大きい筋肉や深層部の筋肉(特に呼吸筋群)を鍛えることが効果的です。
呼吸筋活性による体温変化について
⏩肺理学療法と深部体温
【すべてのエクササイズに共通する注意事項】
- 呼吸を止めない
- 使っている筋肉を意識する
- お腹を軽く凹ましてキープする
主に呼吸で鍛えられる呼吸筋群は身体の深部にあるので、身体の奥から代謝を活性化させ、体熱を上げてくれます。
1.吸った時お腹が膨らみ、吐いた時にお腹がしぼみます。
2.慣れてきたら、少しずつ吐き切るようにしていきます。
胸が広がる胸式呼吸にならないように注意してください。
20回
比較的表層の腹筋群(主にシックスパックができる腹直筋)や股関節前面の腸腰筋を鍛えるエクササイズです。
1.仰向けで膝を約90°に立てます
2.顎を引き、後頭部から順番に床から離すように上体を起こしていきます。
起き上がれるところまでで構いません。息を吐きながら起こすようにして、呼吸を止めないように注意してください。
20回
心臓より高い位置で特に大きな筋肉が肩です。この肩の筋力強化が手の冷え改善には欠かせません。
ショルダープレスは主に肩の上部を鍛えることができます。
1.ペットボトルを持って肘が90°くらいになるように構えます。
2.肩で押し上げるようなイメージで上に持ち上げます。
20回
主に肩の横側を鍛えることができます。
1.腕を下ろした状態でペットボトルを持ちます。
2.真横ではなく、少し斜め前に上げるようにします(肩の高さまで)。
上げる時に肘が曲がって、手が肘より高くならないように注意してください。
20回
主に肩の前面を鍛えることができます。
1.腕を下ろした状態でペットボトルを持ちます。
2.肩の高さまで持ち上げます(手のひらが向かい合ったまま)。
20回
人体の中で最も大きい筋肉である「大腿四頭筋」を鍛えます。また下半身全般、体幹部も鍛えられるので、最も重要なエクササイズの一つです。
1.腰幅よりやや広く立ち、つま先は少し外に向けます
2.股関節を曲げるようにして腰を膝の高さまで下ろしていきます。
3.膝の高さまで下ろした時に上体とスネが平行になります(上体が倒れすぎないように注意)。
しゃがむ時に息を吸い、戻る時に吐くようにして呼吸を止めないように注意してください。
20回
ふくらはぎは第二の心臓とも呼ばれています。心臓から最も遠いところに主要筋肉で、血液循環に非常に重要になります。
1.腰幅程度に開き、つま先はまっすぐ向けます
2.母趾球側でしっかり床を押すようにして、ゆっくりかかとの上げ下げをします。下ろした時にかかとが床につかないように注意してください。
30回
冷え性改善に大切な栄養素
特に冷え性の改善に欠かせない栄養素は「タンパク質、ビタミンE、マグネシウム」です。
タンパク質は筋肉や血液の原材料で、人間が絶対に欠かすことができない栄養素です。また食事をすることで熱産生を高める「食事誘発性熱産生 」が高い食品でもあります。
運動している場合は筋肉の回復や成長させるために不可欠です。タンパク質の摂取がないと、逆に筋肉量が減ってしまう恐れもあります。
注意点は動物性タンパク質に偏らないこと。動物性タンパク質の摂りすぎは腸内環境の悪化を招き、逆に冷え性を促進させてしまいます。そして肉類より魚介類を多く摂ることを意識してください。
おすすめタンパク質
・大豆食品(豆腐、豆乳、納豆)
・ミックスビーンズ
・青魚(さば、いわし、さんま)
・イカ、タコ、貝類
・鶏肉
・卵
・乳製品(チーズ、ヨーグルト)
ビタミンEには末梢血管を拡げ、血行を良くする働きがあります。通常の食事では過剰症は起きにくく心配ありませんが、サプリメントなどの過剰摂取は軽度の肝障害を起こすおそれもあるので、摂取には注意してください。
ビタミンEを多く含む食品
・アーモンド
・たらこ
・アボカド
・オリーブオイル
・赤ピーマン
・たらこ
マグネシウムは酵素の働きをサポートし、エネルギー生産などを促進させます。また筋肉や内臓の正常な働きをサポートするほか、精神安定の効果もあります。
マグネシウムは現代人の慢性的な不足栄養素なので、意識して摂取していくことが重要です。
マグネシウムを多く含む食品
・大豆食品(納豆、豆腐)
・ごま
・くるみ
・バナナ
・プルーン
・海藻類
身体を冷やさない日常生活の心がけ
運動する以外にも、日常生活の中でも階段を使うなど、できるだけ体を動かす量を増やすようにしましょう。
・階段をつかう
・隙間時間にかかとの上げ下げ
・仕事の合間などにストレッチをする
※隙間時間とは電車で移動中、電車やバスを待っている時、信号待ちなどのちょっとした時間のこと。
同じ姿勢で動いていない状態が続くと血流は悪くなります。特にデスクワークなどで座りっぱなしの状態だと、体液循環が悪くなるので、冷えやむくみを加速させてしまいます。
適度に席を立って軽く屈伸したり解せればいいのですが、難しい場合は座ったまま、かかとの上げ下げやつま先の上げ下げを行ってください。
冬場はもちろん夏でも湯船に浸かるように心がけましょう。毎日入浴して体を温めることは冷え性の予防に欠かせません。
体の深部まで温まり血液循環が良くなることや、リラックスして自律神経のバランスを取る効果もあります。
40〜41℃くらいの温度で少し長め(15〜20分程度)に浸かるようにし、リラックスするような入浴剤を入れるのも効果的です。
冷え性の人は一度冷えてしまうと、なかなか暖かくなりにくいのでまずは冷やさないように注意してください。
特に意識したいことは「つま先・足・お腹まわり・首まわり」です。
・内臓を温めること=お腹まわり
・大きい血管を温めること=首まわり、脚
外出時
・腹巻き
・マフラーやスカーフ
・保温タイツ
・ウォーマー
・ホッカイロ
外出時は特に首まわりの保温を意識してください。(特に冬場)
室内
自宅にいる時も腹巻きや靴下を履いて冷やさないように気をつけましょう。靴下は5本指ソックスの方が血流を妨げません。就寝時は湯たんぽなども効果的です。
よくある冷え性の悩みQ&A
Q1.冷え性のせいで寒くてなかなか眠れません。
・腹巻きをする
・湯たんぽを使う
・靴下はNG
靴下を履くと発汗で逆に熱を奪い冷やしてしまうことがあるので避けてください(靴下を履く場合はつま先が開いているタイプにする)。
Q2.防寒しても冬の外出がつらい
・腹巻きをする
・ホッカイロを使う(前ポケット、腰回り)
股関節前面(鼠蹊部)には大きな血管(大腿動脈、大腿静脈)が通っており、前ポケットにホッカイロを入れておくと、温かい血液が足先に流れていくようになります。
Q3.仕事中、暖房がついていても手足が冷たい
立ち仕事:かかとの上げ下げ、屈伸運動
デスクワーク:かかとの上げ下げ、肩甲骨周りのストレッチ
特にデスクワークや立ちっぱなしの仕事は、冷えを悪化させてしまいがちです。体を動かさずじっとしていると、エネルギー消費による熱生産が低くなります。
また筋肉が働かないため血流が悪くなってしまうのです。長い時間同じ体勢にならないように、定期的に軽くほぐすように心がけてください。
まとめ
昔から「冷えは万病の元」と言われるくらい、注意が必要なものです。「冷え性がつらい、なんとかして改善したい」そう思ったらまずはご紹介したエクササイズを行ってみてください。