骨粗鬆症が女性に多い理由
- 一番の原因は女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下
「骨粗鬆症患者の統計」でもわかるように骨粗鬆症の発症率を見ると、男性に比べ女性の方が多いことがわかります。骨粗鬆症患者の80%以上が女性 と言われています。
また50代以上の女性の10人に1人は骨粗鬆症患者というデータも出ています。女性の方が骨粗鬆症のリスクが高い最も大きな原因は「女性ホルモンの分泌量の変化」 です。
■骨粗鬆症患者の統計
・女性980万人
・男性300万人
介護必要必要度区分のうち「要支援」になる第3位の原因が「骨折・転倒」です。骨粗鬆症はロコモティブシンドロームなどの原因にもなりやすく、要介護や寝たきりになる大きな原因になっています。
エストロゲンの分泌低下
女性ホルモンであるエストロゲンは骨のリモデリングに関わる破骨細胞の働きを抑制する作用があります。
エストロゲンが分泌されなくなると骨リモデリングのバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回り骨密度が低下していきます。
一般的にエストロゲンは女性の閉経(平均年齢50歳)の4〜5年前、更年期と呼ばれる時期から減少していきます。よって閉経後の中高齢期以降になりやすくなるのです。
対して男性は急激な減少がありません。もちろん女性ほど分泌量は多くありませんが、一定量分泌が続くので骨に対する大きな問題が起きにくいのです。
【骨リモデリングとは】
ヒトの骨は常に壊して吸収、形成というサイクルを繰り返しています。骨を壊して吸収するのが破骨細胞、骨を形成するのが骨芽細胞です。
骨吸収と骨形成が一定バランスであれば骨密度は保たれます。しかし「骨吸収>骨形成」になると骨密度が低下していきます。反対に骨吸収<骨形成の場合は、大理石病など骨の疾患が引き起こされます。
過剰なダイエット
間違ったダイエットは「必要な栄養素の不足、低体重、ホルモンバランスの乱れ」など、身体に様々な悪影響を及ぼします。
女性は男性に比べ体重や体型への意識が高いので、過度なダイエットをしがちです。しかしそれは骨を弱くする原因にもなります。
ダイエットをすることは良いことですが、間違ったダイエットや過度な減量は絶対にいけません。
骨粗鬆症の原因
骨粗鬆症になる原因は主に原発性と続発性の2つです。
■原発性
明らかな疾患がなく、加齢や閉経、遺伝、生活環境などが要因
■続発性
原因となる疾患や薬の副作用などが要因
ここでは続発性は除いて、原発性骨粗鬆症の原因となるものを挙げています。
■骨粗鬆症の原因
・加齢
・閉経によるエストロゲンの減少
・低体重
・栄養バランス(特にビタミンD)
・運動不足
・喫煙
・過度の飲酒
・過激なダイエット
骨粗鬆症になりやすい女性の特徴
骨粗鬆症になりやすい女性の特徴は低体重と活動量の不足 です。
<低体重だと骨粗鬆症になりやすい原因>
- 骨に対する負荷が低い
- 低栄養の可能性がある
体重というのは骨に対する負荷にもなります。立っている時や歩いている時など、骨に対する負荷になっていて強化されているのです。
しかし体重が少なすぎると骨への負荷が低く徐々に弱くなってしまいます。さらに低体重の人ほど低栄養の可能性が高いので、栄養の問題も影響しています。
体重は太りすぎていれば生活習慣病などのリスクが高くなるので、やはり平均体重を保つようにしたいところです(BMI22前後)。
骨粗鬆症患者の割合
現在、日本の骨粗鬆症患者は1100万人と推定されています。そのうち80%は女性です。
■日本人女性の骨粗鬆症有病率
・50代で7%
・60代で30%
・70代で37%
・80代で42%
60代以降で急激に高くなります(閉経時期の50歳代前半から骨強度がどんどん下がっている)。
骨粗鬆症は通常であれば、確実に防げる病気です。何よりも重要なことは運動習慣。筋力と同じで体を動かすことこそ骨強度の維持・強化につながるのです。
骨粗鬆症の症状
骨粗鬆症とは「骨量の減少や骨組織や骨質の劣化によって、骨が脆弱になり骨折しやすくなった状態」のことを言います。骨粗鬆症は高齢者に多い疾患の一つで、予防が絶対に必要になります。
- 骨粗鬆症は寝たきりの引き金になる
骨粗鬆症はがんや心疾患のように直接的に生命を脅かす病気ではありません。しかし何より恐ろしいのは健康寿命を大きく縮めてしまう病気だということです。
骨粗鬆症になれば骨折しやすくなります。またロコモティブシンドロームの大きな原因にもなり、ひいては「寝たきり・介護」の引き金になってしまうのです。
骨には体を支え動かすという大きな役割があります。体を動かしにくくなるのは筋力が低下するだけでなく、骨の弱化も大きな原因なのです。
骨粗鬆症予防に大切なことは運動と栄養
骨粗鬆症予防に重要なのは骨に刺激を与える運動と、骨の生成に重要な栄養素の摂取です。
骨に刺激を与える運動とは
骨を強くするためにはどんな運動でもいいわけではありません。骨に対して長軸の刺激が入る運動が必要です。
例えば歩くというのは着地の度に骨に対して長軸の刺激を受けます。足裏で着地した際に地面からの反動による刺激を受けます(オレンジの矢印)。
このように骨に刺激が入る運動は必要になります。骨に刺激が入る運動は主に地上で行う有酸素運動や筋トレになります。
部屋で簡単強く元気な骨を作る運動メニュー4選
骨を強くするには骨に対して刺激を与える運動が必要です。
足踏み
足踏みは歩行と同じで着地の際の衝撃が骨に対して負荷がかかるので、骨の強化に適しています。バランスが不安定な時は何かにつかまってください。
目安:1分
踏み台昇降
1.ステップ台や階段などを使って昇降を繰り返す。
※何かにつかまって行なっても構いませんので、転倒に注意してください。
目安:1分
スクワット
1.肩幅より少し広く立ちつま先はやや外に向ける。
2.股関節を曲げて膝の高さまで腰を下ろしていく。
3.腰を膝まで下ろしたら戻る
しゃがむ深さで強度が変わりますので、きつい場合は浅くしゃがむようにしてください。しゃがんだ時に背中が丸まらないように注意してください。
目安:20回
フォワードランジ
1.腰幅程度に立ち、一歩前に脚を出して後ろの膝を曲げる
2.立ち上がりながら前脚で床を蹴って元の戻る
しゃがんだ時、上体はやや斜めになります。
目安:交互に20回
骨を強くするのに欠かせない栄養素
骨を強くするために重要な栄養素は「タンパク質・カルシウム・マグネシウム・ビタミンD・ビタミンK」 です。
骨粗しょう症の治療と予防のガイドラインによれば、以下の項目が推奨されています。
・カルシウムを食品から700〜800mg
・ビタミンD 400〜800IU(10〜20μg)
・ビタミンK 250〜300μg
・喫煙をしない
・過度の飲酒、カフェイン摂取の制限
タンパク質 | |
1日の摂取量目安(g) | |
おすすめ食品 | 鶏肉、魚介類(青魚、タコ、イカ、エビ、貝類)、大豆食品(豆腐、納豆、豆乳)、卵、ヨーグルト、チーズ |
筋肉や臓器など身体を構成する最も重要な成分。骨の形成、強化にも欠かせません。 |
カルシウム | |
1日の摂取量目安 (mg) |
50歳以上 男性:700 女性:650 |
おすすめ食品 | じゃこ、しらす、小エビ、小松菜、チンゲンサイわかめ、こんぶ、大豆食品(豆腐、納豆、厚揚げ) |
摂取に注意が必要な方 | 活性型ビタミンD3製剤服用者、カルシウム製剤服用者、腎機能障害のある方、高カルシウム血症患者 |
必須ミネラルの一つでカルシウム摂取が不足すると骨粗鬆症や骨折しやすくなる原因の他、慢性的なカルシウム不足は肩こりやイライラするといった原因にもなります。 |
マグネシウム | |
1日の摂取量目安(mg) | 50〜69歳 男性:350 女性:290 70歳以上 男性:320 女性:270 |
おすすめ食品 | |
マグネシウムは生体中に約25g含まれており、そのうち60〜65%が骨中にあります。骨の強化というとカルシウムを思い浮かべますが、同様にマグネシウムも非常に重要になります。 |
ビタミンD | |
1日の摂取量目安(μg) | 50歳以上 男性:5.5 女性:5.5 |
おすすめ食品 | 鮭、サンマ、イワシ、納豆、きくらげ |
ビタミンDはカルシウムやリンの吸収を促進する作用があります。また血中カルシウム濃度を一定に保つ働きがあり、健康な骨を保つには欠かせない栄養素です。不足すると骨軟化症の原因にもなります。 |
ビタミンK | |
1日の摂取量目安(μg) | 50歳以上 男性:150 女性:150 |
おすすめ食品 | あしたば、つるむらさき、春菊、ほうれん草、納豆 |
ビタミンKには、カルシウムが骨に沈着するときに必要なオステカカルシンというタンパク質を活性化させる働きがあります。ビタミンDとともに丈夫な骨つ作りに重要なビタミンです。 |
まとめ
現在、骨粗鬆症患者予備軍合わせると、全人口の1割以上にも登ります。これは国民病と言っても過言ではありません。そして年々増加傾向にあります。
これは運動量の低下に伴い増加していることを示しています。骨粗鬆症を防ぐには何より運動量を増やすことです。
骨粗鬆症にならないためには、定期的に骨密度検査を受けるなど、細かいチェックが欠かせません。そして何より運動が重要ですので、歩くことや軽い筋トレ、ストレッチを習慣にしていきましょう。
1.骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版 日本骨粗鬆症学会
2.女性ホルモンと骨粗鬆症 慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 太田博明
3.閉経期女性の骨代謝における食事と運動の役割 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所食品保健機能研究部 石見佳子
4.日本人の食事摂取基準(2015 年版) 厚生労働省
5.栄養の基礎がわかる図解辞典 成美堂出版
6.骨粗鬆症と運動療法 須田浩太 白土修
7.アメリカスポーツ医学会 運動処方の指針 第8版
8.NSCAジャパン 骨粗鬆症:スポーツ医学専門職のためのエクササイズプログラム作成に関する洞察
9.病気が見える11 運動器・整形外科