体幹トレーニングも筋トレも身体を鍛えることを言います。ではなぜ区別しているかというと目的が特化しているからです。筋トレは総合的なものに対し、体幹トレーニングは体幹を鍛えることに特化しています。この記事では体幹トレーニングと筋トレの目的や効果の違いについて解説していきます。
体幹トレーニングと筋トレの違いとは
筋トレは身体を鍛えるトレーニングの総称です。その中でも体幹を鍛えることに特化しているのが体幹トレーニングです。体幹とは頭部と四肢(手足)を除いた胴体部のことですが、体幹トレーニングは胴体部分の中でも主に深層筋(インナーマッスル)のトレーニングを指します。対して筋トレは表層筋(アウターマッスル)を鍛えるトレーニングを指しています。
体幹トレーニングはスタビリティの向上(正しい姿勢の維持やバランス能力の向上など)、筋トレはモビリティの向上や筋肉量を増大させることなどです。実際、体幹トレーニングでもアウターマッスルは働いているし、同じく筋トレでも体幹(深層筋)は働いています。体幹トレーニングではアウターマッスルは働かない、筋トレではインナーマッスルは働かないというわけではありません。
- 体幹トレーニングは主に体幹部の深層筋群(インナーマッスル)を鍛えることを指す。
- 筋トレは体幹部や四肢(手足)の区別関係なく、表層筋(アウターマッスル)を鍛えることを指す。
体幹トレーニングの目的と効果
体幹は重力から身体を支えるための抗重力筋が多く存在し、身体を支える重要な役割を果たしています。この体幹部の深層にある抗重力筋を鍛えるのが体幹トレーニングです。体幹トレーニングは「引き締まった体型になりたい、悪い姿勢をなおしたい、疲れにくい体を作りたい、普段歩いている時などバランスが悪い」そういった人におすすめです。反対に筋肉量を大幅に増やしムキムキな体になりたい、より重いものを持てるような最大筋力を高めていきたいといった場合は体幹トレーニングだけでは足りません。
体幹とは
体幹とは頭部、手足を除いた胴体部分です。人間の体は動かすための司令塔である頭部(脳)、動きを安定させる土台部分の体幹、動きのメインの手足という構成です。体幹は主に「身体を重力から適切に支える・四肢(手足)を動かす時の安定力・バランス能力」など身体の根幹をなす土台になります。特に体幹部には抗重力筋という重力に抗して姿勢を保持する筋肉が多いことから、身体を安定させるのに重要といわれるのです。さらに手足を動かす土台にもなるので、動きやすくケガをしにくい身体のためにも体幹が強いことが求められます。
重力に対して立位姿勢を保持する働きをするのが抗重力筋です。抗重力筋は前面が「頸部屈筋群、腹筋群、腸腰筋、大腿四頭筋、前脛骨筋」、後面が「頸部伸筋群、脊柱起立筋群、大臀筋、ハムストリングス、下腿三頭筋」になります。
抗重力筋の中でも「頸部伸筋群、脊柱起立筋群、ハムストリングス、ヒラメ筋」は活発な筋活動が必要で、主要姿勢筋と呼ばれています。見てみると体幹部に抗重力筋が多く存在していますよね。なので体幹トレーニングは姿勢や身体の安定性に重要といわれているのです。
体幹とインナーマッスルは同じ?
体幹とインナーマッスルは混合されがちですが同じではありません。インナーマッスルとは体の深層にある筋肉です。対して体の表層にあり表面のアウトラインを作っているのがアウターマッスルです。力こぶのできる上腕二頭筋や、胸板を作る大胸筋などがそうです。一般的に筋肉というと、アウターマッスルを指すことがほとんどです。
体幹部にはインナーマッスルもアウターマッスルもあります。ではなぜ体幹がインナーマッスルと混合されがちかというと、体幹部にはインナーマッスルが多いことが挙げられます。また四肢(手足)にはインナーマッスルがないかというと、そんなことはありません。代表的なのは肩のローテーターカフ、股関節の深層外旋六筋などです。
個人的にはトレーニングをする際、体幹とインナーマッスルの意味を細かく区別しすぎる必要はないかなと思いますが、正確にはインナーマッスルと体幹は違うということは知っておいてください。
体幹部(胴体)にあるインナーマッスルとアウターマッスル | |
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インナーマッスル | アウターマッスル |
小胸筋、前鋸筋、菱形筋、鎖骨下筋、、腹横筋、横隔膜、腰方形筋、肋間筋、脊柱起立筋群、半棘筋群、回旋筋、多裂筋、上後鋸筋、下後鋸筋、大腰筋、小臀筋 | 大胸筋、広背筋、僧帽筋、大円筋、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋(外腹斜筋の内側にある)、大臀筋、中臀筋 |
インナーマッスルの役割
重力に対して身体を安定させること、アウターマッスルの補助をして動きを安定させることです。姿勢を保持することやバランスの安定、手足を楽に動かせるために働いています。
アウターマッスルの役割
骨を動かして関節運動を行うことです。他には体壁として骨格や内臓を保護する役割もあります。またインナーマッスルよりアウターマッスルのほうが大きい筋肉が多いので、熱の産生(体温の維持)や血流などにも大きく関与しています(もちろんインナーマッスルも関与しています)。
体幹トレーニングとは
体幹を鍛えることを目的にしたトレーニングですが、その中でも体幹部の深層筋群を鍛えることに特化しています。ですのでトレーニング内容的には静止したまま維持する種目、自重を使ってゆっくり動かすような種目、バランスツールを使った種目がほとんどです。重い重量を扱うトレーニングはインナーマッスルよりアウターマッスルが働きやすいので、あまり高重量を扱うようなトレーニングはありません。
体幹トレーニングで鍛える筋肉
- 脊柱起立筋(頸部伸筋群を含む)
- インナーユニット(腹横筋、横隔膜、多裂筋、骨盤底筋群)
- 内腹斜筋、外腹斜筋、腹直筋
- 内肋間筋
- 腸腰筋
- ローテーターカフ
- 臀筋群
体幹トレーニングは体幹部の深層筋を鍛えるわけですが、体幹と腕をつないでいる肩のインナーマッスルであるローテーターカフも鍛えられます。
体幹トレーニングの効果
- 姿勢の改善
- 肩こりや腰痛の予防改善
- バランス能力の向上
- 身体の安定性の向上
- 身体の引き締め
- 成長ホルモンの分泌
体幹部にある抗重力筋を鍛えることで姿勢が良くなります。また姿勢が良くなることで肩こりや腰痛などの不定愁訴の予防や改善にもつながります。
体幹の深層筋を鍛えることはムキムキなマッチョ体型にはなりませんが、引き締まった身体を作るには最適です。また負荷のある運動全般に言えることですが、トレーニングをすると成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンには強力な脂肪分解作用があるので、有酸素運動前や1日の始まり(午前中)に行うことでより脂肪燃焼が高まります。
体幹トレーニングでは筋肉量は増えない?
体幹トレーニングで筋肉量は増えないと言われていますが実際は増えます。それは体幹トレーニングでも胴体部の大胸筋や広背筋などのアウターマッスルにも刺激が入るからです。高重量を扱った筋トレほどバルクアップはしませんが筋肉量は確実に増えます。
例えばガリガリに痩せている人が週3〜5日の体幹トレーニングを続けていけば、少しずつ筋肉質な体型になっていきます。筋肉量が増えないということは継続して半年後、1年後でもガリガリのままの体型ということになります。生理学的に見てもそれは絶対にありえません。ただ効率よく筋肉量を増やしていきたい場合は高負荷の筋トレを選択すべきです。
体幹トレーニングを行うときのポイントや注意点
- お腹に力を入れる(ドローインやブレーシング)
- 正しい姿勢で行う(特に骨盤)
- 負荷のかけ方
体幹トレーニングはお腹の引き込み(ドローイン)やお腹の引き締め(ブレーシング)を行い、腰部を安定させて行うことが重要です。また姿勢が崩れると、別の筋肉(アウターマッスル)で代償しやすくなるので、正しい姿勢やフォーム、力の意識をして行うことが最も重要です。ただこれが体幹トレーニングの最も難しいところでもあります。特に体幹トレーニングは自分でやるのと、専門家の指導のもとで行うで全然体感が変わります。
自宅でできる体幹トレーニング
自宅でできるベーシックなメニューをご紹介します。
プランク
フロントブリッジとも呼ばれる最もポピュラーなエクササイズです。
- 肩幅程度で肘をつく(肩と垂直になるように)
- 肩からかかとが一直線になるようにして身体を支える
<ポイント>
頭が下がらない、お腹を締める、きつい場合は膝を着いて強度を下げる(ブリッジ動作なので、肘と足部の距離が近くなる程強度を下げることができる)。
目安:30秒
サイドプランク
横向きのプランクです。下側の体側面が鍛えられます。
- 肩の下に肘を着く
- 肘と足部の2点で身体を支える
ポイント
頭が下がらないようにする
お腹を締める
きつい場合は膝を曲げた状態で着く
目安:30秒
スパインニーアップ
腰部の安定性や腸腰筋の強化。
- 仰向けになり両脚を上げる
- 股関節、膝関節は90°をキープ
ポイント
骨盤が後傾しないようにする(やや前傾気味なので、ベルトラインの上辺りは床とやや隙間があるように)
顎が上がらないように軽く引く
お腹を締める
目安:30秒
ヒップリフト
背面部を強化するエクササイズです。お尻の引き締め目的にもよく紹介される種目です。
- 仰向けで膝を90°程度に曲げる
- お尻を上げる(お尻の付け根から上げるように)
ポイント
腰を反り上げないように注意。お尻が段々下がっていきやすいので、上げ続けるように意識する。
筋力トレーニングの目的と効果
筋トレは筋力を向上させるトレーニングの総称です。実際は体幹トレーニングも筋トレの一種ですが、一般的に筋トレというとアウターマッスルを鍛えるトレーニングを指します。筋トレで筋肉量や筋力が向上することは健康面や外見の審美面で様々な効果が表れます。人間が地球の重力環境の中で生きていくために筋力は欠かせないものです。歳を取るにつれ筋力や筋肉量は低下していくので、加齢に逆らっていくためには筋トレは必須と言えます。
筋トレとは
バーベル、ダンベルなどの重量や自重を負荷にして主にアウターマッスルを鍛えるトレーニングです。筋トレはアウターマッスルの筋力や筋肉量の増加、神経伝達が向上します。人体の中で筋肉が最もエネルギーを要し基礎代謝が最も高いことも特徴なので、基礎代謝を向上させる最も効率の良い方法が筋トレで筋肉量を増やすことです。
筋トレは主に「フリーウエイト(バーベルやダンベル)、マシン、チューブ(ゴム)、自重」などを負荷にして身体を鍛えます。最もイメージされるのはバーベルやマシンで身体を鍛えるような風景ではないでしょうか。
筋トレの効果
筋トレによる身体への主な生理学的変化には次のようなものがあります。
- 筋肉量の増加
- 筋力の向上
- 神経伝達の向上
- 成長ホルモンの分泌
筋肉量の増加
筋トレの効果で代表的なのは筋肉量の増加です。筋トレ以外のトレーニング(ランニングなどの有酸素運動や体幹トレーニング)でも筋肉量は増えますが、最も効率よく増えるのは筋トレです。そして筋肉量が増えることで次のような効果があります。
・基礎代謝の向上(太りにくい体作りには必須)
・血流の向上(代謝アップや疲労回復促進、冷え性の予防や肩こり解消)
・見た目の変化(脂肪より筋肉の方が同じ重さでも小さいので引き締まって見える)
筋力の向上
筋トレは負荷次第で最大筋力や筋持久力を向上させることができます。筋力を向上させることで楽に動けるようになり、普段の生活が快適になる、疲れにくくなるなどの身体が変化していきます。また代謝も向上するのでダイエットにも重要な要素になります。
神経伝達の向上
筋トレを始めると神経系の適応が起こり、筋トレをしていない身体に比べ筋力が発揮しやすくなります。これは中枢神経系やゴルジ腱器官の筋力発揮の抑制が低減するためです。※人間の身体は無理をしてケガなどをしないよう筋力発揮を抑制するリミッターが備わっています。例えば、このリミッターが普段は最大筋力の70%値で設定されているとしたら、筋トレ(特に最大負荷に近い高強度トレーニング)をすることで、80%、90%と高めていくことができるのです(つまり最大で発揮できる筋力が向上する)。また筋トレしていない身体と比べ、筋トレをしている身体は神経伝達の反応が早くなるので力が入れやすくなります。
成長ホルモンの分泌
体幹トレーニングの項目を参照。
筋トレを行うときのポイントや注意点
- 初心者の人は呼吸を止めない
- 自分に合った強度で行う
- しっかり最大可動域で行う
初心者の人は呼吸を止めない
特に力を入れる際に息を止めてしまいがちで、いわゆるいきむような感じになってしまいます。呼吸を止めると血圧の急上昇させる原因になり、吐き気やめまいなど体調不良の原因になります。筋トレ初心者の人は必ず息を吐くことを意識してください。筋トレが慣れてきて高重量で行う場合などに呼吸を止めて行うバルサルバ法などもありますが、まずは息を吐くことを必ず意識しましょう。
自分に合った強度で行う
初めのうちは軽めの負荷でいいので、フォームや身体の使い方を覚えるようにしましょう。最初から負荷が高いと身体を痛める原因になります(特に関節部の軟部組織)。筋トレについて調べると最大筋力の何%がいいとか色々出てきますが、筋トレに慣れている人の70%と筋トレ初心者の70%では感じる強度やターゲット筋肉以外への負担が全く異なります。なので、まずは自覚強度で「やや楽〜ややきつい」くらいで行いましょう(大体強度的に40〜50%程度)。このくらいの強度だと回数的には15〜20回くらいになると思います。
最大可動域で行う
筋トレはできるだけ最大可動域で動かすようにしてください。可動範囲が狭く小さく動きだと、筋肉に対する刺激が十分ではなく効果が低くなってしまいます。ちなみに反動をつけて行うのはダメ、と説明されていることがよくありますが必ずしもそうではありません。目的によって反動(チーティング)を行うことが重要なこともあります。どんな目的かで筋トレはやり方も変わりますので、単一の情報だけを参考に行わないように気をつけてください。
代表的な筋トレのご紹介
代表的な筋トレの種目を簡単にご紹介します。
ベンチプレス
筋トレの代表的なメニューです。主に胸(大胸筋)肩、上腕三頭筋などを鍛える種目です。
スクワット
スクワットはキングオブエクササイズとも言われる種目です。バーベルを担ぐ、ダンベルを持つ、自重で行うなどバリエーションもたくさんあります。
腕立て伏せ
自重トレーニングの代表的なエクササイズの一つです。筋トレというとバーベルなどの重要やマシンのトレーニングをイメージしますが、自重のメニューもたくさんあります。
体幹トレーニングと筋トレ、どっちをやるべき?
両方やるのがベストです。体幹トレーニングで土台を強くし筋トレでさらにアウターを強化することで、より動きやすく外見的にも美しい体型になります。あとはどちらを重視するか、筋トレはどのくらいの負荷でやるかなど、自分の目標や理想を考慮して決めていけばいいと思います。
体幹トレーニングと筋トレの効果的な組み合わせ方
体幹トレーニング重視の場合
- 体幹トレーニングと自重での筋トレをサーキット形式で行う
(例)プランク→腕立て伏せの繰り返し この場合筋トレの負荷が高すぎると続かないので、筋トレの負荷はやや軽めがいいでしょう。
筋トレ重視の場合
筋トレを高負荷で行っている場合は、最初に軽い体幹トレーニングで身体の安定性を作ってから筋トレという流れ。体幹トレーニングをやりすぎると、メインの筋トレのパフォーマンスが下がってしまうので注意してください。
中負荷〜低負荷で筋持久力の向上が目的の場合は、筋トレのインターバル(休憩)中に体幹トレーニングを行います。例えばバーベルスクワット→インターバル中にプランク→再度バーベルスクワットを繰り返す。
両方バランスよくやりたい場合の基本は体幹トレーニング、筋トレの順で行うのがいいでしょう。先に体幹を安定化させてから筋トレする方が効果的です。
体幹トレーニングと筋トレの違いのまとめ
- メインに鍛えられるところが体幹トレーニングはインナーマッスル、筋トレはアウターマッスル。
- 体幹トレーニングは自重やバランスツールを使うことが多く、重量器具はあまり使わない。
- 筋トレのメインはバーベルやダンベル、マシンなど。
- 効果の最も大きな違いは筋肉量が大きく増加するかどうか(効率よく筋肉量を増やすには筋トレ)。
- 姿勢の改善やバランス能力改善は体幹トレーニングが効果的
体幹トレーニングも筋トレもやり方を間違うと、効果が薄れるだけでなくケガの原因にもなるので注意してください。トレーニング初心者の方は、最初は専門家に見てもらいながらやるのが最も無駄がなく効果的かと思います。
体幹トレーニングに興味のある方、ぜひ正しく本当に効果的な体幹トレーニングをご体験ください。